ブルーベリー「ど根性栽培」
長野県安曇野のブルーベリー観光農園「ブルーベリーの森あづみの」もだんだんと暑い季節となってきており、ブルーベリー狩りシーズンまで、あと僅かになってきました。
今回は、「ブルーベリーの森あづみの」で開園当初から採用している、栽培方法「ど根性栽培」について、紹介したいと思います。
「ど根性栽培」は、千葉県木更津市の「エザワフルーツランド」の江澤貞雄氏が提唱する、栽培方法です。
江澤氏は、2024年度まで、日本ブルーベリー協会の会長を務めておられました。

- 作者: 江澤貞雄
- 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
- 発売日: 2014/10/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
私が自身の農園でブルーベリー栽培を始める前、お話を伺いに千葉県まで行き、農園も見学させて頂きました。
その後も、適宜、ご指導をいただいております。
江澤貞夫氏は、「ど根性栽培」と称した、栽培方法を提唱しています。
ど根性栽培のポイントは以下のとおりです。
【ど根性栽培のポイント】
1,植え床作りはしない(大地に直接植える)
2,植え付後水やりをしない(してはいけない)
3,肥料はたくさんやらない(1年目から育てようとしない)
日本ブルーベリー協会公式WEBサイトより引用 https://japanblueberry.com/info/culti_guts.html
少し補足させていただくと、上記は樹勢の強いラビットアイ系ブルーベリーの場合で、資材としては、植え付け時に菜種油かすと硫黄の粉を少量使用します。
また、ハイブッシュ系ブルーベリーはラビットアイ系よりも、工程が増えます。
また、ど根性栽培のポイントとして、水はけのよい、有機物や腐食の豊富な土壌、といった適地を選ぶことも大切です。
ど根性栽培は、2023年にNHK「趣味の園芸」でも紹介されています。
より詳細を知りたい方は、日本ブルーベリー協会のWEBサイト、書籍などもご覧ください。
ブルーベリーど根性栽培の実践
ど根性栽培の初期成長はゆっくりとしてました

初年度は、330本ほどのラビットアイ系ブルーベリーをど根性栽培で植えました。
現在は600本ほどのブルーベリーを栽培していますが、9割以上はラビットアイ系ブルーベリーです。
農地は、「黒ボク土」という火山灰質の水はけが良い土壌。前作が牧草で、頻繁に耕起されていない。有機物が豊富な良い状態でした。

農地の確保の関係で、植え付けが遅くなってしまい、5月の末頃、梅雨前の暑く乾燥する時期に植えていましたので、条件はよくなかったと思います。
既に気温が上昇していたので、油かすは使用できず、pH調整の硫黄粉のみ散布しました。
植え付け時も含めて、水はやりませんでした(というか、圃場の環境的にできない)。
それでも、一年目に枯れたブルーベリーの株は一つもなく、同時にラビットアイ系ブルーベリーの強靭さも感じました。
ど根性栽培の初期成長は、それほど早くなく、むしろ遅く感じるぐらいでした。
ピートモスや化学肥料などを使用している方の圃場と比較しても、初期の成長は遅く、当時は焦りもありました。
2~3年目くらいから成長が早くなった

ゆっくりな成長に、不安もありましたが、信じて待つことに。
そのうち2~3年目くらいから、急によく伸びるようになり、ブルーベリーたちもコツをつかんできたように見えました。
野菜づくりなどをしていても感じることですが、植物が何か「掴んだ」ように、活き活きとする瞬間がわかることがあります。
まさに、そんな感じでした。
今は、年々大きく成長しており、ほとんどのブルーベリーの樹は私の背丈は超えています。
成長と同時に収量も年々大幅に増えていっています。

ど根性栽培は、特性上、その土地の土壌にかなり影響を受けるので、まずは適地をしっかり選定し、適地で作ることが大切だと感じます。
今のところ、特に生育のわるい品種はありませんが、新しい品種では試していないので、品種によっても、合うものや合わないもののあるのかもしれません。
今年は、少し試行的に新しい品種などもテストしています。

ど根性栽培は、基本的には樹勢の強いラビットアイ系ブルーベリーが向いています。
ハイブッシュ系ブルーベリーについては、ど根性栽培でも特に問題なくよく育っています。
しかし、うちのハイブッシュ系ブルーベリーはポット栽培していた樹を移植したものです。
2年生くらいの幼苗からど根性栽培でスタートしたことがないので、ハイブッシュ系ブルーベリーへの栽培方法の適合については、まだわからない部分もあります。
興味が色々と広がってきたので、こちらも、色々とテストしていきたいと思っています。

また、現在、ブルーベリー成木は、ラビットアイ系ブルーベリー・ハイブッシュ系ブルーベリーどちらとも、牧草の刈草だけで、生育や結実も問題なく栽培できており、基本的に外部からの資材の投入は行っていません。
ブルーベリーに限らず、栽培している作物をその土地や農地周辺の資材だけで、栽培できることを目指してきたため、この点は本当に満足しています。
菜種油かすと硫黄粉は現在も植え付け時には、使用していますが、硫黄粉は植え付け時のみ一度だけ、菜種油かすも成長に伴いやめています。
特に硫黄粉は、初期の頃の酸度(pH)調整というよりは、実際には、モグラなどの獣の掘り起こし対策の方が役割が大きいと感じています(かなり効果あり)。
山に近い場所ではイノシシなどにも有効なようです。
数年前に、肥料等について江澤氏に相談した際にも、資材は、状態を見て選択・検討することが大切とおっしゃっていました。

栽培方法を理解するには、その手法の提唱者などにしっかりと話を聞き、そこに至った背景まで含めて理解をすることが大切だと私は思っています。
本やWEBサイトなどの情報だけでは、表現しきれないことも多いためです。
実際にお話しを伺うと本などにはかかれていない情報があったり、今はやり方が更新されていたり、そもそも自分の解釈が違っていたことに気づかされることも少なくありません。
そのため、本などはしっかり読みこむのはもちろんですが、講座などで実際に出かけていったり、直接教わることを大切にしています。

そして、最終的には、実践をしなければわからないので、実践をしながら、自分の農地の環境や、自身の目的にあった方法で自分に落とし込む(自己適用)が大切ではないかと思います。
ここ数年は「道法スタイル」や「菌ちゃん農法」なども、学んでいます。
引き続き、日々観察しながら、実践し、勉強していきたいと思っています。